前回に引き続き10次公募での審査項目について解説していきます。
事業再構築補助金の公募要領が2023年3月30日に公開されました。10次公募から申請枠など制度自体が大きく変更となっており、それに合わせて審査項目も変更となっています。
以前にもブログに書いた通り、補助金の採択率を上げるためには審査項目に準じた記載が必要です。そのためには審査項目を良く読み、理解することが必要です。
今回から事業再構築補助金10次公募の審査項目について解説していきます。今回は「再構築点」です。
10次公募の審査項目(再構築点)
9次公募との比較
10次公募の審査項目を見る前に、9次公募の審査項目を確認しておきましょう。
【9次公募 再構築点】
- 事業再構築指針に沿った取組みであるか。また、全く異なる業種への転換など、リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるか。※複数の事業者が連携して申請する場合は、連携体構成員が提出する「連携体各者の事業再構築要件についての説明書類」も考慮し採点します。
- 既存事業における売上の減少が著しいなど、新型コロナウイルスや足許の原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響で深刻な被害が生じており、事業再構築を行う必要性や緊要性が高いか。
- 市場ニーズや自社の強みを踏まえ、「選択と集中」を戦略的に組み合わせ、リソースの最適化を図る取組であるか。
- 先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域のイノベーションに貢献し得る事業か。
- 本補助金を活用して新たに取り組む事業の内容が、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応した、感染症等の危機に強い事業になっているか。
10次公募では以下のように変わりました。
【10次公募 再構築点】
- 自社の強み、弱み、機会、脅威を分析(SWOT分析)した上で、事業再構築の必要性が認識されているか。また、事業再構築の取組内容が、当該分析から導出されるものであるか、複数の選択肢の中から検討して最適なものが選択されているか。
- 事業再構築指針に沿った取組みであるか。特に、業種を転換するなど、リスクの高い、大胆な事業の再構築を行うものであるか。※複数の事業者が連携して申請する場合は、連携体構成員が提出する「連携体各者の事業再構築要件についての説明書類」も考慮し採点します。
- 補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性等)が高いか。その際、現在の自社の人材、技術・ノウハウ等の強みを活用することや既存事業とのシナジー効果が期待されること等により、効果的な取組となっているか。
- 先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域やサプライチェーンのイノベーションに貢献し得る事業か。
- 本補助金を活用して新たに取り組む事業の内容が、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応した、感染症等の危機に強い事業になっているか。
10次公募での変更点は?
それでは再構築点を一つずつ見ていきましょう。
①自社の強み、弱み、機会、脅威を分析(SWOT分析)した上で、事業再構築の必要性が認識されているか。また、事業再構築の取組内容が、当該分析から導出されるものであるか、複数の選択肢の中から検討して最適なものが選択されているか。
これは今までになかった項目ですね。9次公募までは「自社の強みを踏まえ」と「強み」にフォーカスされたものでしたが、今回の項目では「自社の強み、弱み、機会、脅威を分析(SWOT分析)」と強みだけでなく、弱み、機会、脅威も踏まえ、事業再構築の必要性が説明することが求められています。
また、新たな事業がSWOT分析の結果から導出されたものであること、複数の選択肢から検討して最適な事業であることを説明することが求められています。
申請書には、以下の内容を盛り込む必要があるでしょう。
- SWOT分析の表を記載する
- その結果をもとに「事業再構築の必要性」「新規事業の有効性」を説明する
- 候補となり得る、他の事業を記載する
- 他の事業と比較して、取り組む新事業が最適であることを記載する
なかなか大変ですね。
SWOT分析など、どうやったらいいかわからない方は専門家に相談しましょう。
②事業再構築指針に沿った取組みであるか。特に、業種を転換するなど、リスクの高い、大胆な事業の再構築を行うものであるか。※複数の事業者が連携して申請する場合は、連携体構成員が提出する「連携体各者の事業再構築要件についての説明書類」も考慮し採点します。
②は前回までと若干文言が変わっていますが、内容は変わりありませんね。
- 「新たな事業が事業再構築指針に沿ったものであること」
- 「その事業が既存の延長線上ではなく、リスクの高い思い切った取組であること」
これらを申請書で明確に説明しましょう。
なお、事業再構築指針は10次公募から変更となっているので、注意しましょう。
③補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性等)が高いか。その際、現在の自社の人材、技術・ノウハウ等の強みを活用することや既存事業とのシナジー効果が期待されること等により、効果的な取組となっているか。
こちらは前回まで「事業化点」の項目でしたが、10次公募から「再構築点」となりました。内容は変更ありません。
- 「投資額に対する付加価値額やキャッシュフローの増額規模」
- 「その実現可能性」
- 「自社の強みや技術・ノウハウの活用方法」
- 「既存事業とのシナジー効果(新事業を行うことで既存事業にもいい影響を与えること)」
これらを申請書に明確に記載しましょう。
④先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域やサプライチェーンのイノベーションに貢献し得る事業か。
この項目も前回までと似ていますが、「地域」または「サプライチェーン」のイノベーションに貢献し得る事業かという点が問われるようになりました(前回は「地域」のみ)。
新事業の取り組みを通じて、地域やサプライチェーン全体の好影響を及ぼすことを申請書には記載しましょう。
イノベーションという言葉が使われていますが、そこまで難しく考える必要はありません。「好影響」くらいの感覚でOKです。中小企業の取り組みなので、イノベーションとまで言える取り組みは多くはないでしょう。「新事業はイノベーションという程のものではない」と弱気に考える必要はありません。
⑤本補助金を活用して新たに取り組む事業の内容が、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応した、感染症等の危機に強い事業になっているか。
ここも9次公募までと変更ありませんね。
- 感染症対策にも気を配っている
- ポストコロナ時代の社会・消費者動向の変化に合わせた事業である
これらのことを説明しましょう。
新たな審査項目のポイント
新たな審査項目における再構築点でのポイントは以下のとおりです。
(私個人の主観です)
- 前回までとの違いは①の項目
- SWOT分析を行い、自社の置かれた経営環境を説明した上で、新たに取り組み事業が適切であることを説明することが必要
- 事業再構築指針は10次公募から変更となっているので、前回までと同じ内容ではダメ
- それ以外の項目は大きな変化なし
SWOT分析を行うことが明記されたため、申請書に分析結果を記載する必要があります。どのように対応したらいいか、ご不明な場合は当社アドバイザーにご相談ください。