事業再構築補助金の公募要領が2023年3月30日に公開されました。

10次公募から申請枠など制度自体が大きく変更となっており、それに合わせて審査項目も変更となっています。

以前にもブログに書いた通り、補助金の採択率を上げるためには審査項目に準じた記載が必要です。そのためには審査項目を良く読み、理解することが必要です。

今回から事業再構築補助金10次公募の審査項目について解説していきます。今回は「事業化点」です。

10次公募の審査項目(事業化点)

9次公募との比較

10次公募の審査項目を見る前に、9次公募の審査項目を確認しておきましょう。

【9次公募事業化点】

  1. 本事業の目的に沿った事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。また、金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。
  2. 事業化に向けて、競合他社の動向を把握すること等を通じて市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。市場ニーズの有無を検証できているか。
  3. 補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、かつ、事業化に至るまでの遂行方法及びスケジュールが妥当か。補助事業の課題が明確になっており、その課題の解決方法が明確かつ妥当か。
  4. 補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性等)が高いか。その際、現在の自社の人材、技術・ノウハウ等の強みを活用することや既存事業とのシナジー効果が期待されること等により、効果的な取組となっているか。

1次公募から9次公募まで事業化点の審査項目はほぼ変わりがありませんでしたが、10次公募では以下のように変わりました。

【10次公募事業化点】

  1. 補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。市場ニーズの有無を検証できているか。
  2. ターゲットとするマーケットにおける競合他社の状況を把握し、競合他社の製品・サービスを分析し、自社の優位性が確保できる計画となっているか。特に、価格・性能面での競争を回避し、継続的に売上・利益が確保できるような差別化戦略が構築できているか(オープン/クローズ戦略等を通じた知財化戦略や標準化戦略による参入障壁の構築、研究開発やブランディング・標準化を通じた高い付加価値・独自性の創出、サプライチェーンや商流の上流・下流部分を自社で構築するなど他社が模倣困難なビジネスモデルの構築、競合が少ない市場を狙うニッチ戦略等)。
  3. 事業化に向けて、中長期での補助事業の課題を検証できているか。また、事業化に至るまでの遂行方法、スケジュールや課題の解決方法が明確かつ妥当か。
  4. 本事業の目的に沿った事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。また、金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。

10次公募での変更点は?

それでは事業化点を一つずつ見ていきましょう。

①補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。市場ニーズの有無を検証できているか。

これに関しては以前までの②と同様ですね。「ターゲットとするユーザー」「ターゲットとするマーケット」「ターゲット市場の規模」「市場ニーズの有無の検証」について記載しましょう。

②ターゲットとするマーケットにおける競合他社の状況を把握し、競合他社の製品・サービスを分析し、自社の優位性が確保できる計画となっているか。特に、価格・性能面での競争を回避し、継続的に売上・利益が確保できるような差別化戦略が構築できているか(オープン/クローズ戦略等を通じた知財化戦略や標準化戦略による参入障壁の構築、研究開発やブランディング・標準化を通じた高い付加価値・独自性の創出、サプライチェーンや商流の上流・下流部分を自社で構築するなど他社が模倣困難なビジネスモデルの構築、競合が少ない市場を狙うニッチ戦略等)。

長いですね。。文章を分解した上で前回までと同じ部分と、追加された部分で色分けしてみましょう。赤字の部分が以前には記載されていなかった(今回から取り入れられた)部分になります。

①ターゲットとするマーケットにおける競合他社の状況を把握し、
競合他社の製品・サービスを分析し、自社の優位性が確保できる計画となっているか。
特に、価格・性能面での競争を回避し、継続的に売上・利益が確保できるような差別化戦略が構築できているか
③ー1.オープン/クローズ戦略等を通じた知財化戦略や標準化戦略による参入障壁の構築、
③ー2.研究開発やブランディング・標準化を通じた高い付加価値・独自性の創出、
③ー3.サプライチェーンや商流の上流・下流部分を自社で構築するなど他社が模倣困難なビジネスモデルの構築、
③ー4.競合が少ない市場を狙うニッチ戦略等

本項目の主題は3つに分けられます。

①「競合となる他社の状況を把握」
②「競合の製品・サービスを把握」
③「価格や性能での競争ではなく、差別化戦略が構築できているか?」

この3点を説明する必要があります。③ー1から③ー4については差別化戦略の例示ですね。③を説明する際にはこの4つの中からどれかを選んで記載するのがいいでしょう。

前回との大きな違いは、前回までは「価格的・性能的に優位性・収益性を有し」という記載のとおり、他社と比較した競争優位性に焦点が当たっていましたが、今回はそれに加えて「差別的戦略が構築できているか」と記載されています。

これまでは価格面や性能面で他社より優位であることを示せればよかったですが、10次公募からは、それだけではなく「差別化」(特に独自の強みを活かしたもの)を記載する必要があります。

また競合他社の状況についても、これまでは「動向を把握」としか記載されていませんでしたが、10次公募からは「状況を把握した上で、製品・サービス」も把握と記載されました。今後はより詳細な競合分析の記載も必要となるでしょう。

③事業化に向けて、中長期での補助事業の課題を検証できているか。また、事業化に至るまでの遂行方法、スケジュールや課題の解決方法が明確かつ妥当か。

ここは前回とほぼ変わりませんが、補助事業の課題について「中長期」という文言が追加されています。

事業期間内の課題だけでなく、もっと長いスパンで見たときの課題を記載する必要がありますね。

④本事業の目的に沿った事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。また、金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。

これはこれまでと同じですね。「実施体制」「事務処理体制」「直近の財務状況」「資金調達方法」について記載しましょう。

記載が無くなった審査項目

9次公募の④費用対効果やシナジー効果については、事業化点からは記載が無くなっています。ただ、この項目は、そのまま再構築点の方に移っています。

無くなったわけではないので、注意してください。

新たな審査項目のポイント

新たな審査項目における事業化点でのポイントは以下のとおりです。
(私個人の主観です)

POINT
  • これまで以上に事業の独自性、差別化面を重視。
  • 自社の強みを活かした差別化が難しい事業(FCビジネス等)は点数が取りづらくなる可能性あり。
  • 一過性のトレンドビジネスは評価されづらい可能性が高い。
  • 競合分析は製品・サービスのレベルまで詳細に記載する必要あり。
  • 中長期的な視野に立って、課題と解決策を設定する必要あり。
  • より長期的に安定した収益が得られる事業を重視

大きな変更点は、やはり②の部分ですね。

一過性のトレンド事業ではなく、自社の強みを活かして中長期的に安定した収益が獲得できるか否かが問われます。「○○が流行っているから」という理由で取り組むビジネスでは高い評価は望めないでしょう。

審査項目が詳細化され、これまで以上に詳細な事業計画を立案する必要があります。申請を検討されている方は、事業計画立案の参考としてください。

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