以前から情報だけは出ていた「ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠」が公募開始されました。省力化のための設備投資に対して補助が受けられます。

従来のものづくり補助金とは異なる点も多いため、今回は「省力化(オーダーメイド)枠」について、わかりやすく解説してみたいと思います。

なお、申請締め切りは2024年3月1日(金)です。申請を希望される方は早めのご準備をおすすめします。

「ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠」解説

補助金の概要

ざっくり説明すると
  • デジタル技術等を活用した専用設備やシステムを使って省力化(省人化)を図る取り組みが対象
  • 汎用型(カスタマイズしない)設備への投資は対象外
  • 補助上限額は750万円~1億円(従業員数や賃上げ率により変動)
  • 補助率は1/2もしくは2/3(1500万円を超える部分は1/3)
  • 労働生産性を投資前と比較して2倍にする計画が必要
  • 金融機関からの借り入れを受ける場合は、申請時に金融機関確認書を発行してもらう必要あり
  • 一定額以上の申請の場合は書面審査に加え、口頭審査(オンライン)あり
  • 申請締め切りは2024年3月1日、補助事業実施期限は2024年12月10日まで
  • 18次締切でも省力化(オーダーメイド)枠は公募される予定。ただし、17次締切に申請した場合、18次締切への応募は不可

以下は公募要領(1.1版)の省力化(オーダーメイド)枠についての説明です。

人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・システム投資等を支援します。

※ デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)とは、ICTやIoT、AI、ロボット、センサー等を活用し、単一もしくは複数の生産工程を自動化するために、外部のシステムインテグレータ(SIer)との連携などを通じて、事業者の個々の業務に応じて専用で設計された機械装置やシステム(ロボットシステム等)のことをいいます。デジタル技術等を活用せず、単に機械装置等を導入する事業については、本事業の対象とはなりません。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(17次締切分) 省力化(オーダーメイド)枠 1.1版(P14)

今回のポイントは「人手不足の解消」「デジタル技術等の活用した専用設備(オーダーメイド)」であるかという点ではないでしょうか。
審査項目にも以下のような表記があります。

■システム開発については汎用的に利用できるパッケージシステムを元に、顧客の希望に合わせて機能を追加するなどのカスタマイズを行う開発方式や、システムやソフトウェアをゼロからオーダーメイドで開発する開発方式となっており、オーダーメイドの取組になっているか。

■人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・システム投資等となっているか。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(17次締切分) 省力化(オーダーメイド)枠 1.1版(P29)

これらを読む限り、単にパッケージのシステムを購入したり、汎用型の設備を導入したりするだけでは対象とならないようです。システムであればパッケージシステムに機能を追加したもの、もしくはスクラッチで開発したシステムでなければならないようです。

また、付加価値額の年平均成長率3%以上、給与支給総額の年平均成長率1.5%以上、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上の水準にすることが要件となっていることはこれまでと同じですが、今回はさらに以下の要件が追加となっています。

以下の全ての要件に該当するものであること。

(1) 3~5年の事業計画期間内に、補助事業において、設備投資前と比較して労働生産性が 2倍以上となる事業計画を策定すること ※ 労働生産性は「付加価値額(付加価値額の算出が困難な場合は生産量)/(労働人数×労働時間)」とする。完全自動化の場合は「(労働人数×労働時間)」を便宜的に「0.1」とする。

(2) 3~5年の事業計画期間内に、投資回収可能な事業計画を策定すること ※ 投資回収年数は「投資額/(削減工数×人件費単価)」とする。

(3) 外部SIerを活用する場合、3~5年の事業計画期間内における保守・メンテナンス契約を中小企業等とSIer間で締結することとし、SIerは必要な保守・メンテナンス体制を整備すること ※事業終了後、実績報告時点で確認をします。

(4)本事業に係る資金について金融機関(ファンド等を含む。)からの調達を予定している場合は、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出いただく必要があります。金融機関は、事業所の所在地域にある必要はございませんので、任意の機関を選定してください。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(17次締切分) 省力化(オーダーメイド)枠 1.1版(P14)

これまでは、あくまで付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の増額だけでしたが、今回からは労働生産性の改善も目標として組み込む必要があります。また投資回収の計算も人件費の削減による回収(削減工数×人件費単価)を目標とする必要があります。

また、Slerに開発を依頼する場合は、事業計画期間内のメンテナンス契約を結ぶことや、金融機関からの借り入れを予定している場合は、金融機関確認書も必要となっています。

このようにこれまで以上に精緻な計画が必要となるうえ、多くの手続きが必要となります。補助金に関する事務負担が多くなることも覚悟しておいたほうがよさそうです。

補助上限額・補助率

補助上限額と補助率は以下のとおりです。

大規模な賃上げに取り組む場合は補助上限額が増額となります。

出所:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(17次締切分) 省力化(オーダーメイド)枠 1.1版(P15)
大規模な賃上げとは

以下の全ての要件に該当するものであること。

(1) 事業計画期間において、基本要件である給与支給総額を年平均成長率1.5%以上増加させることに加え、更に年平均成長率4.5%以上(合計で年平均成長率6%以上)増加させること。

(2) 事業計画期間において、事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を、毎年、地域別最低賃金+50円以上の水準とすることを満たしたうえで、さらに、事業場内最低賃金を毎年、年額+50円以上増額すること。

(3) 応募時に、上記(1)(2)の達成に向けた具体的かつ詳細な事業計画(大幅な賃上げに取り組むための事業計画)を提出すること。

出所:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(17次締切分) 省力化(オーダーメイド)枠 1.1版(P15)

補助対象経費

補助対象経費の内容は上記のとおりです。ただし、先に書いたとおり、「機械装置・システム構築費」に関しては何かしらカスタマイズした内容の設備(システム)である必要があります。

なお、税抜き単価50万円以上の設備投資なしでは申請できませんのでご注意ください。その他、補助対象経費の詳細については公募要領をご確認ください。

活用イメージ

出所:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(概要版) 省力化(オーダーメイド)枠(P13)

公募要領(概要版)に上のような活用イメージが記載されています。

これを見ると、どれもAI等のデジタル技術を活用したものとなっています。カスタマイズや機能追加をすればいいというものではなく、デジタル化、DX化を推進するものである必要がありそうです。

申請にあたっての注意点

口頭審査

公募要領には一定規模以上の補助金額を申請した場合、口頭(オンライン)での審査を行うと記載されています。時間は15分ほどで以下の日程で行うとされています。

  • 2024年4月1日(月)~2024年4月12日(金)

日時の変更や希望は承れないと記載されています。「一定規模以上の申請」というのがどの程度を示しているのか不明ですが、この日程はできるだけ明けておいたほうがよいでしょう。

ただ、4月1日は期初スタートの会社も多いと思います。4月1日の午前中などを指定されたらたまらないですね。。ピンポイントで予定が合うほど経営者も暇ではないと思うのですが。。

なお、コンサル等の外部専門家、士業、社外顧問等の同席は一切認められませんのでご注意ください。当然、成りすましも不正行為となります(顔写真付きの身分証明書の提示も必要なようです)。

銀行借入を行う場合は金融機関確認書の提出が必要

投資資金を金融機関からの借り入れで賄おうと考えている方も多いかと思います。その場合、借り入れ予定の金融機関に事業計画書を提出し、確認書の発行をしてもらう必要があります。

注意!

金融機関の確認書の発行には時間を要する可能性もあります。早めに金融機関に相談し、いつまでに事業計画書を提出すればよいか、事前に確認しておきましょう。即日発行はまず無理だと思います。

申請にはGビズIDプライムが必要

申請は電子申請のみです。電子申請を行うためにはGビズIDプライムが必要となりますので、まだ取得されていない方は、お早めに申請してください。IDの取得まで2週間ほどかかります。

補助事業実施期限は2024年12月10日まで

補助事業実施期限は2024年12月10日までです。採択発表が5月中旬ごろ、そこから交付申請を行うと交付決定は早くて6月末ころと思われます。オーダーメイドのシステムや設備を半年弱で完成・納品させなくてはいけないというスケジュールなので、かなりタイトと言えます。

事業期間内に設備導入が完了するよう、事前にベンダーや機械メーカーと綿密なスケジュール調整を行っておきましょう。

まとめ

人手不足は多くの中小企業の経営者の方々にとって、大きな課題ではないかと思います。AIやロボットなどを活用し、省力化を図ろうとする方には最適な補助金です。

ただ、事業実施期間が短く、その他制約も多いため、申請にあたっては事業実施が可能か慎重に検討しましょう。