事業再構築補助金とはポストコロナ時代の環境変化に対応するために、中小企業が実施する思い切った事業の再構築を支援する補助金です。

このページでは、事業再構築補助金の概要と内容について、わかりやすく解説していきます。

事業再構築補助金とは

中小企業庁が出している「事業再構築補助金の概要」(10.0版)には以下のように記載されています。

本事業は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新市場進出(新分野展開、業態転換)、事業・業種転換、事業再編、国内回帰・地域サプライチェーン維持・強靱化又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とします。 第12回公募では、既存の事業類型を見直し、今なおコロナの影響を受ける事業者への支援及びポストコロナに対応した事業再構築をこれから行う事業者への支援に重点化を行います。

引用:事業再構築補助金公募要領(第12回)

簡単に言えば、コロナの影響で経営に大きなダメージを受けた事業者の、新しい時代を見据えた新たな取り組みを支援しようというものです。事業の再構築には新たな機械を導入したり、建物の建設・改修が必要となります。

そのようなポストコロナに対応した思い切った事業再構築への取組に補助金を交付するものです。

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申請対象者は?

申請の対象者は中小企業者および中堅企業者です。自社が中小企業かどうかは基本的には「資本金の額」と「従業員数」で判断されます。公募要領に記載されている中小企業者の定義は以下の表のとおりです。

中小企業者の定義
引用:事業再構築補助金第9回公募要領

資本金か従業員数のどちらかが上表の数値以下であれば対象です。両方とも満たす必要はないので注意してください。

中堅企業とは上表に該当せず、かつ以下の要件を満たす企業となります。

  • 資本金の額又は出資の総額が 10 億円未満の法人であること
  • 資本金の額又は出資の総額が定められていない場合は、従業員数(常勤)が2,000 人以下であること

なお、自社が上記要件に該当した会社であっても大企業に株式の大半を所有されている場合などは「みなし大企業」として申請ができない場合がありますのでご注意ください。

注意!

公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等、補助金以外の国からの補助を受けて運営する事業は、補助の二重取りとなるため申請できません。他の補助金で交付決定を受けた事業と同じ事業についても申請することはできません。

申請に必要な要件

申請を行うには3つの要件+各申請枠ごとの要件を満たす必要があります。

1.事業再構築指針を満たす取り組みである

ここまで「事業再構築」という言葉を説明なく使ってきましたが、この補助金での「事業再構築」は明確に定義が定められています。「新市場進出(新分野展開、業態転換)」「事業転換」「業種転換」「事業再編」「国内回帰」の5つに当てはまる取り組みである必要があります。当てはまらない取り組みは本補助金に申請することはできません。

事業再構築指針3.0
引用:事業再構築指針の手引き(3.0版)

9次公募までとは、内容が変更になっています。新分野展開と業態転換は「新市場進出」にまとめられていますね。

事業再構築指針の詳細については「事業再構築指針の手引き」を参照ください。

2.認定経営革新等支援機関と一緒に計画策定を行う

事業再構築補助金は事業者単独では申請できません。認定経営革新等支援機関(以下、認定支援機関)と一緒に計画策定を行う必要があります。

申請時には認定支援機関の確認書を添付する必要があるので、まずは一緒に計画を策定してもらえる機関を探すことが必要です。

なお、当社代表の日下も個人として認定支援機関の認定を受けております。

また、金融機関からの借入を行って事業を行う場合は、金融機関に計画書を提出し確認書を発行してもらう必要があります。投資資金を銀行借入で賄う予定の場合は、早めに金融機関にも相談しましょう。

認定経営革新等支援機関とは

認定経営革新等支援機関とは中小企業の経営改善を支援するために、経済産業省が認定した専門の支援機関のことを指します。一定レベル以上の経営に関する知識や実務経験を有する機関であるという認定です。金融機関、公認会計士・税理士・中小企業診断士等の士業、民間コンサルティング会社、商工会・商工会議所などが認定を受けています。認定支援機関は中小企業庁のサイトでも検索することができます。https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/kikan.htm

3.付加価値を増加させる取り組みであること

補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以
上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)
以上増加させることが必要です。

付加価値とは

付加価値とは「営業利益+減価償却費+人件費」で計算されます。

以上3つの要件を満たすことで、申請することができます。特別枠に申請する場合は上記以外にも追加の条件がありますので、ご自身の会社が当てはまっているか判断できない場合は、一度ご相談ください。

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補助率・補助上限額一覧

補助率と補助上限額一覧は以下のとおりです。申請する枠や従業員数によって異なります。基本的には従業員数が多くなるほど、補助金上限額が高くなっています。従業員数に役員はカウントされませんのでご注意ください。

申請類型補助率補助上限額
(A)成長分野進出枠
(通常類型)
中小企業者等 1/2(2/3)
中堅企業等 1/3(1/2)(※1)
【従業員数20人以下】
100万円~1,500万円(2,000万円)
【従業員数21~50人】
100万円~3,000万円(4,000万円)
【従業員数51~100人】
100万円~4,000万円(5,000万円)
【従業員数101人以上】
100万円~6,000万円(7,000万円)
(※1)
(B)成長分野進出枠
(GX進出類型)
中小企業者等 1/2(2/3)
中堅企業等 1/3(1/2)(※1)
中小企業者等
【従業員数20人以下】
100万円~3,000万円(4,000万円)
【従業員数21~50人】
100万円~5,000万円(6,000万円)
【従業員数51~100人】
100万円~7,000万円(8,000万円)
【従業員数101人以上】
100万円~8,000万円(1億円)
中堅企業等
100万円~1億円(1.5億円)
(※1)
(C)コロナ回復加速化枠
(通常類型)
中小企業者等 2/3(※2)
中堅企業等 1/2(※3)
【従業員数5人以下】
100万円~1,000万円
【従業員数6~20人】
100万円~1,500万円
【従業員数21~50人】
100万円~2,000万円
【従業員51人以上】
100万円~3,000万円
(D)コロナ回復加速化枠
(最低賃金類型)
中小企業者等 3/4
(※ 一部2/3)
中堅企業等 2/3
(※ 一部1/2)
【従業員数5人以下】
100万円~500万円
【従業員数6~20人】
100万円~1,000万円
【従業員数21人以上】
100万円~1,500万円
(E)サプライチェーン強靭化枠中小企業者等 1/2
中堅企業等 1/3
1,000万円 ~ 5億円以内
※建物費がない場合は3億円以内
(F)卒業促進上乗せ措置(※4)中小企業者等 1/2
中堅企業等 1/3
各事業類型(A)~(D)の補助金額上限に準じる。
(G)中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置(※4)中小企業者等 1/2
中堅企業等 1/3
100万円~3,000万円
(※1)()内は短期に大規模な賃上げを行う場合
(※2)従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは3/4
(※3)従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは2/3
(※4)申請枠(B)もしくは(D)に申請する場合、同時に申請することで補助上限額の上乗せとなるもの

上表は第12回応募締切回の情報です。補助率や補助上限額は締切回ごとに変更になりますので、必ず最新の公募要領を確認してください。

補助率とは

補助率とは使用した経費のうち、補助金として戻ってくる割合のことを言います。例えば補助率2/3の場合、1,500万円経費を使って1,000万円(1,500万円×2/3)補助金として戻ってくる計算となります。

申請枠の詳細

第12回から申請枠が統合されて新たな類型となっています。(F)(G)は上乗せ枠であるため、サプライチェーン強靭化枠を除くと実質的に申請できる枠は(A)~(D)の4枠となります。

申請枠要件等
(A)成長分野進出枠
(通常類型)
ポストコロナに対応した、成長分野への大胆な事業再構築にこれから取り組む事業者や、国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の事業者が取り組む事業再構築を支援。
(B)成長分野進出枠
(GX進出類型)
ポストコロナに対応した、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組をこれから行う事業者の事業再構築を支援。
(C)コロナ回復加速化枠
(通常類型)
今なおコロナの影響を受け、コロナで抱えた債務の借り換えを行っている事業者や、事業再生に取り組む事業者の事業再構築を支援。
(D)コロナ回復加速化枠
(最低賃金類型)
コロナ禍が終息した今、最低賃金引上げの影響を大きく受ける事業者の事業再構築を支援。
(E)サプライチェーン強靭化枠ポストコロナの経済社会において、海外で製造等する製品の国内回帰や地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠な製品の生産により、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組を行う中小企業等に対する支援
(F)卒業促進上乗せ措置各事業類型(A)~(D)の補助事業を通して、中小企業等から中堅企業等に成長する事業者に対する上乗せ支援。
(G)中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置各事業類型(A)~(D)の補助事業を通して、大規模な賃上げに取り組む事業者に対する上乗せ支援。
引用:事業再構築補助金公募要領(第12回)

詳細な要件については事業再構築補助金のHPより公募要領をご確認ください。

一番申請しやすいのが(D)コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)と思われますので、この枠に関しては激戦となりそうです。かつてのような売上高減少要件はなくなりましたが、申請要件はやや厳しくなりました。

補助の対象となる経費

事業再構築補助金では、補助対象となる経費が以下のとおり定められています。

建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門
家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、
広告宣伝・販売促進費、研修費、廃業費

※サプライチェーン強靭化枠は「建物費」「機械設備・システム構築費」のみとなります。

ここでは申請の多い、「建物費」「機械装置・システム構築費」「外注費」「広告宣伝・販売促進費」について簡単に概要を説明します。それ以外の経費については公募要領を参照してください。

費 目内 容
建物費
  • 専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設・改修に要する経費
  • 補助事業実施のために必要となる建物の撤去に要する経費
  • 補助事業実施のために必要となる賃貸物件等の原状回復に要する経費
  • 貸工場・貸店舗等に一時的に移転する際に要する経費(貸工場・貸店舗等の賃借料、貸工場・貸店舗等への移転費等)
機械装置・システム構築費
  • 専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、製作、借用に要する経費(①)
  • 専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入・構築、借用に要する経費(②)
  • ①又は②と一体で行う、改良・修繕、据付け又は運搬に要する経費
外注費本事業遂行のために必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費
広告宣伝・販売促進費本事業で開発又は提供する製品・サービスに係る広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、展示会出展(海外展示会を含む)、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、マーケティングツール活用等に係る経費
引用:事業再構築補助金第9回公募要領より作成

「建物費」・・・補助事業に用いる建物の建設、改装、拠点撤退の際の原状回復費用など
「機械装置・システム構築費」・・・機械購入やシステム開発の費用が対象
「外注費」・・・設計やデザイン、品質検査等を委託する場合の経費が対象
「広告宣伝・販売促進費」・・・補助事業に関する販促物の作成やWEB広告等が対象

注意!

補助金の前提として、「使用目的として申請書に記載した以外の用途には使ってはいけない(目的外使用の禁止)」というルールがあります。補助金で購入した物を目的外の用途に流用することができません。発覚した場合は補助金返還となることもありますので、必ず購入する設備等の使用用途は明確に申請書に記載しましょう。また、購入した設備等を事務局の許可なく譲渡・売却・廃棄することや抵当権を設定することも一定期間できませんのでご注意ください。

建物費は要注意(特に新築)

上記の経費の中で要注意なのが「建物費」です。建物費の対象となるのは減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)における「建物」、「建物附属設備」に係る経費が対象です。「構築物」に係る経費は対象になりません。

「構築物」に当たるものの一例として「塀・門扉」「フェンス」「外構工事」「駐車場(平面)」などで、これらは補助対象外となります。建物と区別が付きづらいので、判断が難しいです。わからない場合は顧問の税理士さんなどに確認しましょう。

加えて、抵当・根抵当権の問題もあります。特に補助金で整備した建物に根抵当権を設定することはできません。

根抵当権が設定されている土地に建物を新築する場合は、根抵当権設定契約において、建設した施設等の財産に対する追加担保差入条項が定められていないことについての確認書を交付申請時に提出する必要があります。

建物を新築する際には多くの条件がありますので、条件に適合するかよく確認してから申請を行いましょう。

事前着手申請

基本的に補助金で採択されても交付決定となるまでは事業を始める(=工事や設備の発注・契約を行う)ことはできません。第11回までの公募では一部申請枠に事前着手申請が認められていたため、交付決定前でも事業を始めることができていましたが、第12回からは事前着手申請は原則廃止となりました。

今回事前着手申請が認められるのは以下の方のみです。

①第10回、第11回公募において、物価高騰対策・回復再生応援枠又は最低賃金枠の補助金交付候補者として不採択となった事業者が、第12回公募において、コロナ回復加速化枠(通常類型)又はコロナ回復加速化枠(最低賃金類型)に申請する場合

②第10回公募において、サプライチェーン強靱化枠の補助金交付候補者として不採択となった事業者が、第12回公募において、サプライチェーン強靱化枠に申請する場合

今回初めて申請する方については事前着手は認められませんので、交付決定までの日数も見越して計画を立てる必要があるでしょう。

申請方法

申請方法は電子申請のみとなります。申請を行うためには「GビズIDプライム」が必要となりますので、取得されていない方はまずGビズIDプライムを取得しましょう。

GビズIDは社会保険の申請や許認可の申請にも使用され、用途が年々拡大していますので、すぐに補助金の申請を考えていない方も取得しておいて損はないでしょう。

なお、取得まで2週間程かかります。締切直前まで申請を忘れていて、結局申請できなかったという話もよく聞きます。補助金を申請すると決めたらすぐに申し込みましょう。

事業再構築補助金の今後の見通し

紆余曲折ありながら、第12回公募がはじまりましたが、おそらく今回が最後の公募になる可能性が高いです。どうしてもやりたい事業があるのであれば、今回必ず申請するようにしましょう。

また、今回から審査の厳格化が明言されています。既存事業と大差ない事業、単なる更新投資などでは採択は難しいでしょう。事業計画についてもより綿密に詳細に作成する必要があります。

当社でも申請サポートを行っておりますので、申請をご希望の方はお早めにお問合せください。

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